原状回復工事の内容とは?よくある工事の種類と補修・交換・クリーニングの判断基準

原状回復工事の内容とは?よくある工事の種類と補修・交換・クリーニングの判断基準
RATIO美装 石丸部長
この記事の監修者
石丸 貴之 RATIO美装 工事部 部長

原状回復・修繕業務 8年 / フロアコーティング職人 6年

退去立会い・原状回復工事の現場に10年以上携わり、これまで5,000件以上の賃貸物件を担当。豊富な現場経験をもとに、物件ごとの状態や契約内容を踏まえた適切な原状回復工事の判断・提案を行っている。

専門分野: 住宅設備の交換・建具の修繕・室内の補修工事

担当業務: 退去立会い・リフォーム施工・在宅修繕

保有資格: 一般建築物石綿含有建材調査者

賃貸物件の退去後に行う原状回復工事には、ハウスクリーニングだけでなく、クロスや床の貼替え、建具補修、水回り施工、設備交換などさまざまな工事があります。

ただし、傷や汚れがあるからといって、すべて新品へ交換すればよいわけではありません。

管理会社が原状回復工事の内容を確認する際には、「どこを工事するか」だけでなく、どの方法で直すのが適切かまで整理することが重要です。

この記事では、賃貸住宅の原状回復工事でよく行われる施工内容と、補修・交換・クリーニングを判断するポイントを解説します。

目次

原状回復工事の主な内容は「清掃・補修・貼替え・交換」に分けられる

原状回復工事というとクロスの貼替えやハウスクリーニングをイメージしやすいですが、実際には室内の状態に合わせてさまざまな工事を組み合わせます。

大きく整理すると、主な施工方法は次の4つです。

施工方法主な内容
クリーニング汚れ・水垢・油汚れなどを洗浄する
補修キズ・穴・剥がれなどを部分的に直す
貼替え・打替えクロス・床材・コーキングなどを新しくする
交換劣化・故障した部品や設備を交換する

たとえば浴室であれば、鏡はウロコ洗浄、コーキングは打替え、換気扇は交換というように、状態に合わせて施工方法を組み合わせることがあります。

原状回復工事の見積もりを確認するときは、工事項目だけを見るのではなく、なぜその施工方法になっているのかまで確認すると工事内容を判断しやすくなります。

原状回復工事でよくある工事内容

原状回復工事では、室内全体を確認したうえで次回の入居に必要な施工を組み立てます。

ここでは、賃貸住宅で比較的よく行われる工事を施工箇所ごとに紹介します。

・ハウスクリーニング
・クロスの補修・貼替え
・床の補修・貼替え
・建具・木部の補修
・水回りの洗浄・補修
・エアコン・換気扇・給湯器などの設備工事
・畳・襖・障子などの和室工事

ハウスクリーニング

退去後の原状回復工事で基本となるのがハウスクリーニングです。主に、下記項目などを清掃します。

・キッチン・浴室・洗面所・トイレ窓・サッシ・建具・収納・床・ベランダ

通常清掃だけでは落としにくい汚れがある下記のような場合には、強化洗浄を組み合わせることもあります。

・浴室鏡のウロコ・水回りの水垢・換気扇の油汚れ・浴室のカビ

また、エアコンについても室内清掃とは別に内部洗浄を行う場合があります。

汚れがあるからすぐ交換するのではなく、洗浄によって次回入居に必要な状態まで戻せるかを確認することがポイントです。

クロスの補修・貼替え

壁や天井のクロスの代表的な症状には、下記のような項目があります。

・汚れ・シミ・破れ・めくれ・家具跡・ビス穴・日焼け・カビ

施工方法は状態によって異なり、軽微な傷であれば補修、破れや汚損が大きい場合には貼替えを検討します。また、一部分だけ貼り替えた場合、既存クロスとの色や柄の違いが目立つことがあります。

そのため、単純に「傷がある場所だけ直す」のではなく、既存クロスの品番や施工範囲、仕上がりまで確認することが重要です。

床の補修・貼替え

原状回復工事で扱う代表的な床材には、下記があります。

・フローリング・クッションフロア・フロアタイル・カーペット・タイルカーペット

フローリングの軽微な傷であればリペア補修を選択できることがあります。一方で、クッションフロアの破れや変色、カーペットの大きな汚損などは貼替えが必要になる場合があります。

床材は施工方法によって工期や費用も変わるため、傷の大きさだけではなく、既存材を活かせるか、補修後の見た目に問題がないかまで確認します。

建具・木部の補修

室内ドアや収納扉、枠などの建具も原状回復で確認する重要な箇所です。

・キズ補修・穴/へこみ補修・塗装・シート補修・丁番調整・取手交換・扉調整

建具に傷があっても、本体をすべて交換する必要があるとは限りません。リペアや塗装、シート施工などで外観を整えられるケースもあります。

特に建具交換は既存製品が廃番になっているケースもあるため、補修で対応できるかを先に確認すると工事費を抑えられる場合があります。

水回りの洗浄・補修

キッチン・浴室・洗面所・トイレは、汚れだけでなく水漏れや部材の劣化も確認します。

・コーキング打替え・鏡のウロコ洗浄・水栓部品交換・排水部材交換
・パッキン交換・便座交換・換気扇清掃・換気扇交換

水回りでは、設備本体に問題がなくても、パッキンや水栓部品などの消耗によって不具合が発生している場合があります。

そのため、いきなり設備一式を交換するのではなく、不具合の原因が本体なのか部品なのかを確認することが重要です。

エアコン・換気扇・給湯器などの設備工事

代表的な設備工事には、下記のようなものがあります。

・エアコン・給湯器・浴室換気扇・キッチン換気扇・温水洗浄便座・照明インターホン・水栓・レジスター

設備については見た目だけでなく、実際に正常に動作するかを確認することが重要です。清掃や部品交換で継続使用できる場合もあれば、経年劣化や故障によって本体交換が必要になることもあります。

次回入居後に設備不良が発生すると、管理会社側で再度手配する必要があるため、原状回復工事のタイミングで状態を確認しておくことが重要です。

RATIO美装の施工事例でも、経年劣化したエアコン・給湯器・浴室換気扇は交換しながら、浴室鏡やキッチン換気扇については洗浄を選択するなど、設備ごとに施工方法を使い分けています。

畳・襖・障子などの和室工事

和室がある物件では、下記項目も原状回復工事に含まれます。

・畳表替え・畳交換・襖貼替え・障子貼替え

ただし、畳や襖、障子についても、退去時に必ず借主負担で貼り替えるというものではありません。

国土交通省は、経年変化や通常使用による損耗のみであれば、原則として賃借人負担で張り替える必要はないという考え方を示しています。

レシオ

施工する必要があるかという問題と、誰が費用を負担するかという問題は分けて考えることが大切です。

「補修・交換・クリーニング」はどう判断する?

原状回復工事では、傷や汚れを見つけること以上に、どの施工方法を選ぶかが重要です。

判断するときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。

・汚れを落とせるならクリーニング
・機能を保ったまま直せるなら補修
・使用に支障がある場合は交換を検討
・施工費だけでなく仕上がりと次回入居まで考える

汚れを落とせるならクリーニング

まず確認したいのが、洗浄によって改善できるかどうかです。

たとえば、下記項目などであれば状態によっては交換せず洗浄で対応できます。

・鏡の水垢・換気扇の油汚れ・浴室の汚れ・エアコン内部の汚れ

交換する前に、清掃で次回入居に必要な状態まで回復できるかを確認します。

機能を保ったまま直せるなら補修

傷や破損があっても、設備・建材としての機能に問題がなく、部分補修で仕上がりを確保できるのであれば補修を検討します。

・フローリングの傷・建具の傷・木枠の傷・扉のシート剥がれ・ソフト巾木の剥がれ

既存部材を活かせれば、交換よりも工事範囲を小さくできる場合があります。

使用に支障がある場合は交換を検討

設備の故障や著しい劣化があり、補修しても安定した使用が難しい場合には交換を検討します。

特に下記の項目などは、入居者が日常的に使用する設備は機能面の確認が重要です。

・給湯器・エアコン・換気扇・水栓・温水洗浄便座

表面をきれいにするだけではなく、次回入居後に問題なく使用できるかまで考えて判断します。

施工費だけでなく仕上がりと次回入居まで考える

原状回復工事では、安い施工方法が必ずしも最適とは限りません。

たとえば部分補修のほうが工事費を抑えられても、補修跡が大きく目立つ場合には、募集時の室内印象へ影響する可能性があります。

反対に、軽微な傷まで一律に交換すると工事費が膨らみます。そのため、施工費・仕上がり・機能・工期を総合的に見ながら施工方法を決めることが重要です。

原状回復工事は「必要な工事」と「費用負担」を分けて考える

管理会社が原状回復工事を整理するときに注意したいのが、「施工が必要か」と「誰が費用を負担するか」は別の判断という点です。

たとえばクロスに汚れがあり、次回募集のため貼替えが必要だったとしても、その費用がすべて退去者負担になるとは限りません。

国土交通省のガイドラインでは、下記の等を分けて考えます。

・経年変化・通常損耗・賃借人の故意/過失・善管注意義務違反・通常の使用を超える使用による損耗

また、賃借人に費用負担が生じる場合でも経過年数を考慮する考え方が示されています。

そのため実務では、「室内状態を確認する」→「必要な施工方法を決める」→「契約内容や消耗原因を確認する」→「費用負担を整理する」という順番で考えると整理しやすくなります。

原状回復工事で施工漏れを防ぐために確認したいポイント

原状回復工事では、クロスや床など目立つ箇所だけでなく、設備の動作や細かな部材まで確認することが重要です。確認漏れがあると、工事後に追加手配や再訪問が発生し、工期の遅延につながることもあります。

ここでは、施工漏れを防ぐために事前に確認しておきたいポイントを整理します。

・内装だけでなく設備の動作も確認する
・品番や既存部材の状態を記録する
・写真と施工範囲を見積書に残す
・次回入居予定から工期を逆算する

内装だけでなく設備の動作も確認する

クロスや床など目に見える部分だけでなく、下記項目なども確認します。

・エアコン・給湯・換気扇・照明・インターホン・温水洗浄便座・水栓

見積もり後に設備不良が発覚すると、追加工事や再手配に繋がりやすくなります。

品番や既存部材の状態を記録する

設備交換が必要な場合には、メーカー名や品番を確認します。

クロスや床材も、既存品や似寄り品を確認できれば、施工範囲を判断しやすくなります。

現地で必要な情報を残しておくことで、見積もり作成後の再訪問を減らせます。

写真と施工範囲を見積書に残す

「クロス貼替え」「床補修」だけでは、どの場所をどの程度施工するのか分かりにくくなります。

写真と施工範囲を紐づけておけば、工事発注・オーナーへの説明・工事業者への共有・完了確認まで進めやすくなります。

次回入居予定から工期を逆算する

原状回復工事は、工事内容だけでなく工期管理も重要です。

設備交換では商品の手配が必要になり、物件によっては管理組合への工事申請や共用部養生が必要になる場合もあります。

レシオ

実際に弊社では、工事申請が必要な物件では、室内施工だけでなく申請や共用部養生まで含めて工程を組んでいます。

次回入居日が決まっている場合は、必要な工事を早い段階で整理しておくことが重要です。

まとめ|原状回復工事は一律に交換せず状態に合わせて施工方法を選ぶ

原状回復工事には、ハウスクリーニング、クロス・床の貼替え、建具補修、水回り施工、設備交換などさまざまな工事があります。

重要なのは、「傷があるから交換」「汚れているから貼替え」と一律に判断しないことです。

クリーニングで改善できるのか、補修で既存部材を活かせるのか、部品交換で対応できるのか、本体交換が必要なのか。

室内の状態を確認したうえで施工方法を選ぶことで、仕上がりと工事費のバランスを取りやすくなります。

管理会社にとっては、こうした判断を物件ごとに整理し、必要な工事だけを漏れなく発注できる状態をつくることが、原状回復業務を効率化するポイントです。

RATIO美装では、退去立会いから次回入居に必要な工事内容を整理し、原状回復まで一括して対応します。
ぜひ、RATIO美装までご相談ください。

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